「冬の不快な静電気」、知っているようで知らない静電気の秘密を解説

 冬に発生する静電気、嫌ですよね...

 この季節、ドアノブやエレベーターのスイッチ、あるいはセーターを脱ごうとするときなど、「うう、静電気でバチッとしないように...」なんて思いながら、恐る恐る触れる人もいるのではないでしょうか。

 実はこの静電気、冬に限らず、一年中季節を問わず発生しています。

 冬になると、痛みを感じるような静電気が発生しやすいというのは、確かなのですが。

静電気とは

 あらゆるものは、基本的に電気を帯びています。
 これは金属、プラスチック、布などの無機物だけではなく、人体も同様です。

 そして、電気には、プラスの電気とマイナスの電気があります。プラスの電気とマイナスの電気が、同じ数だけあれば良いのですが、何かの拍子にバランスが崩れ、一方に偏った電気量を持つ状態になることがあります。
 この結果、生じるのが「静電気」であり、モノが静電気を帯びた状態を「帯電」と呼びます。

 静電気が発生し、帯電している状態は不安定なので、電気は安定した状態に戻ろうとします。安定した状態に戻ろうとして、電気が流れる状態を「放電」、そしてこの電気を人体で感じると「感電」になります。

 例えば、セーターを脱ぐときに感じるバチバチという刺激も、感電の一種というわけです。

 

 基本的に静電気はモノを動かすだけで発生してしまいます。モノ同士が、接触し、擦れて、そして分離することで静電気は発生するので、モノの輸送中などでも静電気は常に発生してしまうのです。
 静電気は、温度や湿度によって発生量や減衰量が変わります。気温や湿度が下がると静電気が発生しやくなるので、冬の方が静電気を多く感じるのです。

 

 静電気の電圧は、数千から数万ボルトもあります。わたしたちがバチっと痛みを感じる時の静電気の電圧は3,000V以上と言われています。

 家庭用コンセントの電圧が100Vなので静電気が3,000V以上、時には数万ボルトもあると聞くとビックリすると思います。
 なぜ静電気で、火傷に至るような感電をしないかというと、電流が極端に小さいからです。(ここでは割愛します)

「静電気体質」(帯電体質)とは

 世の中には、静電気が起こりやすい人と起こりにくい人がいるようです。
 水分不足やミネラル不足の人が起こりやすいと言われています。

 体内の電気を自然放電しにくく電気を溜めやすい状態を、「静電気体質」もしくは「帯電体質」と呼ぶことがあるそうです。
 「痛みに強い」、あるいは「弱い」、つまり「静電気でバチッとすると、すごく気にする人と、あまり気にしない人」もありそうですね・・・

 静電気が発生して痛みを感じてしまうのは、一気に電気が流れてしまうからです。
 なので、電気を通しやすい金物や金属に触れた時などが一番痛みを感じてしまいます。
 逆にコンクリートや地面、木や紙など電気を一気に流さない物に触ると、溜まっている電気をゆっくりと放電するので痛みを感じなくなります。

静電気が火事を起こしたり、モノを壊すことも

 静電気によって引き起こされる事故もあります。
 コンセントに埃などが積もっていると、静電気を原因として引火、火事や爆発などをおこすこともあり、また静電気により電子デバイスを破壊してしまったり、誤作動を起こしてしまったりすることがあります。

 特にIC(集積回路)などの繊細かつ慎重な取り扱いを必要とする電子デバイスは、静電気のような微細な電気が流れることによって、故障(あるいは壊れる)ことがあります。

 また帯電した静電気が一気に放電することで、想定以上の電流が回路上に流れてしまったり、それにともなって発生した熱が電子部品を破壊してしまうこともあります。

 このように、静電気によって電子デバイスが異常をきたす現象を「静電破壊」と呼びます。

 静電破壊を防ぐには、「帯電させない」「放電させない」ことです。

 和泉では、静電破壊によって電子デバイスが壊れることを防ぐ、帯電防止アイテムとしてブルーのEBX、ピンクのEPを用意しています。(両者の違いは色だけであり、機能・性能は同じです)

 帯電防止アイテムは、フィルム表面に発生した静電気をゆるやかに放電させる働きがあります。
 電子デバイスを帯電防止アイテムで包装・梱包することで、輸送過程において、電子デバイス自身、あるいは梱包箱などとの接触・擦れ・分離によって生じる静電気の発生と帯電を抑制することで、電子デバイスに対する静電破壊を防ぐのです。

帯電防止アイテムの効果

 大先輩に、「今までエアセルマットを使われているお客様のところで静電気により電子デバイスが壊れたことってあるんですか?」と聞いたところ、「聞いたことが無いなぁ」と言われました。

 帯電防止性能を測るものの一つに表面固有抵抗値[Ω]という物があります。
 この値が小さいほど電気が流れやすく、帯電しにくくなります。
 帯電防止品の表面固有抵抗値は10の9乗から12乗[Ω]と言われています。

 表面固有抵抗値が10の13乗以上ですと、静電気が逃げにくく軽いフィルムだとフワフワ動いたり、ほこりをすい寄せやすくなります。
 逆に、表面固有抵抗値の値が小さすぎると、静電気が一気に流れて静電気放電が起きる恐れがあります。

 和泉では製造後1日以上置いた製品の表面固有抵抗値を測定しています。
 表面固有抵抗値を測定し、規定値以下の値が測定されたことを確認して加工、出荷する管理体制を実施しています。

 

 冬の静電気によるバチバチを避けるため、世の中ではさまざまな便利アイテムが用意されています。静電気の痛みを感じやすい人は、こういうアイテムを試すのも一手でしょう。

 筆者の場合、100均で売っている帯電防止ゴム紐(※本来は髪を結わえるゴム紐に、帯電防止機能を付与したもの)を両手首に巻いています。これだけで、不快な静電気にバチバチされることは、大幅になくなりました。

 またこの時期、名刺交換のときに交換相手の指先との間で、静電気が発生することがあります。
 これ、とても嫌です。初対面の相手にも、不快な思いをさせるわけですから。

 ところが、ある女性との名刺交換のとき、「静電気が飛びましたね。これ、運命の出会いかも 笑」と言われ、場が和んだことがありました。

 静電気は溜めたくないですが、こういう気の利いた会話のネタは、溜めていきたいものです。

 

(品質・データ管理部 岡谷公裕)



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