業界必見!、プラ新法(プラスチック資源循環促進法)をやさしく解説

新プラ法って何?、アイキャッチ

 今年(2022年)4月1日、プラスチック資源循環促進法、いわゆる「プラ新法」が施行されました。

 「プラ新法?、耳にはしたけど、どんな法律なの...?」──今回は、この「プラ新法」に関して、当社 改善提案推進部 岩崎修が、和泉通信流にわかりやすく解説しましょう。

プラ新法とは? これまでの経緯とともに解説

 2019年5月、政府は、海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化の幅広い課題に対応するため、「プラスチック資源循環戦略」 (2019年5月31日 消費者庁・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省)を策定し、3R+Renewableの基本原則と6つの野心的なマイルストーンを、目指すべき方向性として掲げました。

 2021年6月には、「プラスチック資源循環戦略」をブラッシュアップし、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立しました。
 これは、プラスチック使用製品の設計からプラスチック使用製品廃棄物の処理まで、プラスチックのライフサイクルに関わるあらゆる主体におけるプラスチックの資源循環の取組を促進するための措置を盛り込んだ法律です。

 プラ新法(プラスチック資源循環促進法)は、こういった過程を経て、2022年に施行されました。

 簡単に言うと、プラ新法は「プラスチックを捨てることを前提としない経済活動」を目的としています。プラスチックの排出量を減少し、さらに資源として循環させるという観点が特徴です。
 対象となるのはプラスチックを扱う事業者や各自治体でありますが、消費者に対しても積極的な協力をお願いする内容となっています。

 「プラスチックを捨てることを前提としない経済活動」──この目的を達成するためにプラ新法は、「プラスチック資源循環戦略」で示された基本原則「3R+Renewable」の促進を重点項目として掲げています。

 「3R+Renewable」を意識した仕組みづくりを行うことで、地球の環境保護を促し、ひいては持続可能な社会を目指そうというのが、プラ新法なのです。

「3R+Renewable」とは?

 「3R」は、循環社会を目指すためのキーワードとして広く用いられ、プラスチック原材料の使用量や廃棄物の排出量を削減、発生抑制(Reduce)し、容器や機能部品は再利用し(Reuse)、さらに廃棄されたプラスチックを原料に戻して再資源化(Recycle)することです。

3R Reduce(リデュース) ゴミの発生量を減らす
Reuse(リユース) 使い捨てにせず、繰り返し使用する
Recycle(リサイクル) ゴミを資源として再生させ、再利用する

 今回は「3R」に加え、プラスチック以外の代替素材への転換、再生利用の容易な素材(紙、繊維など)への転換、バイオマスプラスチックの活用等を目指す「Renewable」の概念が追加されました。

Renewable
(リニューアブル)

製造に使用する資源を再生可能なものやバイオマスプラスチックに置き換える

 ちなみに、「4R」という言葉もあります。
 これは、Reduce、Reuse、Recycleに、Refuse(リフューズ)=「断る」を加えたキーワードであり、「3R+Renewable」とは異なります。

プラ新法で掲げる6つの中間目標(マイルストーン)とは

 プラ新法では、「3R+Renewable」の促進に向けた6つの中間目標(マイルストーン)も示されています。

6つのマイルストーン

  1. 2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%削減
  2. 2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに
  3. 2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクル
  4. 2035年までに使用済みプラスチックを100%リユース・リサイクル
  5. 2030年までに再生利用を倍増
  6. 2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入


さらに実現に向けた具体的な取り組みとして以下5つの措置を定めています。

プラスチック資源循環促進法にかかわる5つの措置

  1. 環境配慮設計指針の策定
    商品が「できる前」の設計、製造の段階で、環境配慮の方針を示す。

  2. ワンウェイプラスチックの使用を合理化
    コンビニのストローやスプーンなど、販売・提供段階でのワンウェイ(=使い捨て)プラスチックの使用を減らす。
    これには、現時点で使い捨てプラスチックを無償提供する事業者への勧告も含まれています。

  3. 市区町村による分別収集や再商品化を促進
    自治体による容器包装などの再商品化が可能に。

  4. 製造・販売事業者等の自主回収を促進
    自主回収・再資源化計画を作成。認定されれば廃棄物処理法の業許可が不要に。

  5. 排出事業者に対する排出抑制や再資源化を促進
    事業者が自主回収、再資源化計画を作成。認定されれば廃棄物処理法の業許可が不要に。

    プラ新法の施行に伴いプラスチック廃棄物を年間250トン以上排出する業者に対し、どれくらいの量を減らすのか、再利用についての取り組みを目標として制定するよう義務付けられます。

    また、2022年4月から国が特定プラスチック使用製品として定めた12品目を提供する対象事業者は、使用の「合理化(=環境負荷にならないように、提供方法を工夫すること)」を求められます。

特定プラスチック使用製品 12品目

 国が、特定プラスチック使用製品として定めた12品目は以下のとおりです

  1. フォーク
  2. スプーン
  3. ナイフ
  4. マドラー
  5. ストロー
  6. ヘアブラシ
  7. くし
  8. カミソリ
  9. シャワー用キャップ
  10. 歯ブラシ
  11. ハンガー
  12. 衣類用カバー

対象業者と、合理化に向けた取り組み

 前年度に提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上であった、以下の多量提供事業者が対象となります。

  • 小売業(スーパー・コンビニ・百貨店など)
  • 宿泊業(旅館・ホテルなど)
  • 飲食店(カフェ・レストラン・居酒屋など)
  • 持ち帰り・配達飲食サービス業(フードデリバリーのサービスなど)
  • 洗濯業(ランドリーなど) 

 また、「どのように合理化」していくのか?」、その具体的な例として以下が挙げられています。

  • スプーンやフォークを有償で提供する。

  • プラスチックの代わりに、木製スプーンや紙ストローを提供する。

  • テイクアウトの飲料の蓋をストローが不要な飲み口機能付きに変更する。

  • ストローを付けるのをデフォルトにせず、利用が必要な場合にだけ声をかけてもらう。

  • 宿泊施設で、アメニティを部屋には置かず、必要な方はフロントに声をかけたりアメニティコーナーで受け取ることができるようにする。

  • クリーニング店でハンガーを店頭回収し、リユースまたはリサイクルを行う。

 以上の対応は、努力義務であり、取り組み・対策が不十分であったり、もしくは違反したとしても、ただちにペナルティを課されることはありません。
 ただし指導・助言にとどまらず、勧告・公表・命令の措置を受けてもなお、違反があった場合には、50万円以下の罰金が処せられることもあるそうです。

 以上、プラ新法の内容を解説しましたが、削減対象として挙げられたのは、特定プラスチック使用用品12品目だけです。家庭ごみの約半分を占めるといわれる、容器や包装フィルム、プラスチックボトルなどのプラスチック容器包装製品は、排出抑制(ワンウェイプラスチックの使用合理化)の対象外であることを考えると、削減効果は限定的と言わざるを得ません。

プラ新法、和泉のようなプラスティック製品メーカーの課題

 今回のプラ新法施行によって、プラスチック製品の製造・加工・販売を生業としている当社にとっても、プラ新法の基本原則である「3R+Renewable」に沿った取り組みをしていく必要があると、重く受け止めております。

 しかしながら、まだまだ当社の立場では、多くの課題があります。

 例えば、ワンウェイ(使い捨て)ではなくリユースできる製品設計をした商品をお客様へ納入した場合、お客様がその製品を使って梱包し出荷した先において回収作業が必要となり、回収のための物流システム構築およびコスト負担の問題が発生します。

 いったん消費され、排出されたプラスチック(ポストコンシューマー)をリサイクル原料として使用し、改めて当社製品として製造加工する場合も悩ましいです。

  • リサイクル原料の品質や安全性の担保を求められた場合の対応が不十分。
  • リサイクル原料を使うことで、当社製造機への負荷が増え、トラブルリスクが予測される。
  • 循環使用を円滑に実現するには、徹底した分別廃棄・回収が必要。
  • リサイクル原料製造機や当社製造機の技術的機能性の向上が不可欠。

 バイオマス原料使用製品の販売拡大は、当社にとっても重要戦略のひとつとして活動しておりますが、一般樹脂原料に比べ2倍近いコストがかかるバイオマス原料を使用した製品は、簡単に採用していただけないのが現実です。

 もちろん、私どもの立場以外にも、課題事項は多々あるでしょう。

 とは言え、日本政府が掲げた『2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現』に向けた重要な政策のひとつである、このプラ新法の施行によって、事業者や各自治体、消費者の意識が変わることこそ「3R+Renewable」の促進につながるものだと思います。

参考および出典

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