意外と知らない?、RoHS指令とREACH規制について解説

 RoHS指令、REACH規制...
 特に製造に関わる方にとっては、日常的に耳にするキーワードですが、「実際のところ、RoHSとかREACHってなんだろう?」と、その内容、違いをよく理解していない方もいるかもしれません。

 今回は、大切なことは分かっているけど、でもちゃんと説明できる方は意外と少ない...?、RoHS指令とREACH規制について、和泉通信流に解説しましょう。

RoHS指令とは

 RoHS(ローズ)とは、「Restriction of Hazardous Substances Directive」の略です。
 日本語では、「電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会指令」などと訳されます。

 誤解を恐れずに、かいつまんで申し上げれば、EUが定めた特定の有害物質に対する使用規制のことを、「RoHS指令」もしくは「RoHS」と呼んでいるわけです。

 元々EUの多くの国では、廃棄物の処理方法として、埋め立てまたは焼却がごく一般的に行われていました。有害物質とされる鉛などを含む電気・電子機器廃棄物も、約90%が埋め立て・焼却されていたそうです。現在の常識、もしくは感覚からすると、ちょっと信じがたいことですが...

 日本でも昔、イタイイタイ病、水俣病など発生し、多くの悲劇を生みました。これらもカドミウムや水銀が、体内に摂取されてしまったがために起こってしまった公害病です。

 有害物質を原因とする悲劇を生み出してはならない──電気・電子機器に含まれる有害物質が環境や人に影響を与えないことを目的にして定められたのが、RoHS指令です。

 まず、2006年7月に以下物質が有害物質として指定されました。(RoHS1.0)

1.カドミウム(cd)
2.鉛(Pb)
3.水銀(Hg)
4.六価クロム(Cr6+)
5.PBB(ポリブロモビフェニル)
6.PBDE(ポリブロモジフェニルエーテル)

 次いで、2019年7月に以下4物質が追加指定されました。(RoHS2.0)

7.フタル酸ジブチル(DBP)
8.フタル酸ジ(2-エチルへキシル)(DEHP)
9.フタル酸ブチルベンジル(BBP)
10.フタル酸ジイソブチル(DIBP)

 現在では、この10物質をまとめてRoHSと呼ぶことが多いです。
 それぞれ使用しても良い量が決められてはいますが、かなりの微量です・・・
 それだけ環境や体に悪影響を及ぼす物だからですね。

 ただし、適用除外となっているものもあります。
 これは製造者が、どうしても禁止する物質を使わないと生産ができなくなってしまう場合で、技術的・化学的に代替が不可能なため、期限付きで認められているものであります。それぞれの物質ごとに用途、使用量の制限、有効期間が細かく定められています

 なんにせよ体に悪いものが規制されるのはいいことだと思います。

 

REACH規制とは

 REACH(リーチ)とは、「Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of CHemicals」の略です。
 EUにおける化学品の登録・評価・認可および制限に関する規則と、日本語では説明されます。

 RoHS指令は「特定有害物質を含む電気・電子機器に対する規制」ですが、REACH規制は「指定された化学物質を登録、開示しなければならない仕組み」です。

 将来的にEUは、REACH規則で、環境に良くない物質をすべて報告させて、EU内に入れても良いか悪いかを決める、という流れにしたいのだと、考えられます。
 確実に日本国内だけで消費されるとわかっている商品であれば、REACH規制は気にする必要はないかもしれません。しかし、EUに輸出される可能性が少しでもあるとしたら報告は必要です。

RoHS指令とREACH規制の違いとは?

 RoHS指令は、規制対象となる10物質について、決められた濃度以上の含有を禁止しています。
 規制内容が整備されているため、良い・悪いが明確に判断可能です。

 一方、REACH規則は、対象とされる物質について、含有を禁止するものではなく、EU内で製品の中にどれくらい含まれていて、どれくらい流通しているのかを把握するのが狙いです。すなわち、報告をすれば含有しても良いということになります。
 ただし、その物質が環境に対して影響を与えないかといえばそうではありません、あくまでも今は報告すれば良いとなっているだけでしょう。
 そもそもの経緯が、化学物質(有害物質)により発生するリスクから、人の健康と環境を保護することを目的としているわけですから、将来的には規制が行われる可能性は高いと考えるべきです。

 REACH規制が対象としている物質は、SVHC(Substances of Very High Concern の略)、日本語では「高懸念物質」もしくは「認可対象候補物質」と呼ばれています。
 「認可対象候補物質」と呼ばれる意味は、「認可対象物質」(認可されないと製造・使用ができないため、事実上の禁止物質)の“候補”といった位置づけです。
 したがって、SVHCは禁止物質の一歩手前の物質とも言えるでしょう。

 ただし、この世の中には数えきれないほどの成分があります。すべての物質について報告をすることは現実的ではありません。
そのため、危険そうな物質(発ガン性・変異原性・生殖毒性物質・残留性、蓄積性、毒性などのある物質)から優先的に、少しずつ報告してもらう形をとっています。

 SVHCは、REACH規制が始まった2007年は10数個の指定でしたが、およそ半年に一回のペースで追加されていっており、2022年現在では223物質にまで増えています。

 当社でもREACH規制に対してSVHC(高懸念物質)の更新が発表される度に含有されていないかどうかを調査して安全性を確認しています。

実は、RoHS指令の対象外である、気泡緩衝材エアセルマット

 RoHS指令は、電気機器、電子機器に含まれる有害物質を対象とした規制です。そのため、当社の気泡緩衝材エアセルマットは、RoHS指令の対象外ということになります。
 ただし、梱包材については「包装品・包装廃棄物指令」という規制があり、カドミウム、鉛、水銀、六価クロムのみが対象となっています。

 しかし当社では、RoHS指令の対象となる10物質について毎年、外部機関に依頼して検査してもらい、安全性を確認しています。

 当社のエアセルマット、もっと言えば、梱包材は製品と付帯して流通するものです。
 消費者の手元に届き、時には幼いお子さまがエアセルマットをプチプチしたり、かじったりすることもあるでしょう。安全であることに越したことはありません。

 和泉のエアセルマットは、RoHS指令10物質対応となっています。
 また、REACH規制に関して、きちんと検査を行い、証明書を発行しております(当社Webサイトに掲載しています)。

 安心して、ご利用ください。

(品質・データ管理部 岡谷公裕)

参考



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