プラ製品を悪者にする、脱プラの風潮に物申す

「プラスティック製ストローを使用するなんてけしからん!」

 そういった風潮に押され、スターバックス、マクドナルド、すかいらーくホールディングスなどが、相次いでプラスティック製ストロー(以下、プラ製ストロー)の廃止方針を表明し始めています。
 ことの起こりは、マイクロプラスティックによる海洋汚染です。

 プラスティック(正確にはポリエチレン)を主原料とするエアセルマットを製造する当社も、こういった世間の風潮に対し、まったく無関係ではいられません。

 今回は、マイクロプラスティックと脱プラの論調について、状況を整理し問題点を考えてみましょう。

問題のマイクロプラスティックとは?

 2016年4月、東京農工大研究チームが行った発表は衝撃でした。
 東京湾で獲れたカタクチイワシの8割近くの内臓から、マイクロプラスティックが検出されたというのです。

 同年12月、東京海洋大学の研究では、日本周辺の海域では、世界の海における平均量の約27倍のマイクロプラスティックが海水中に存在することが発表されました。

 マイクロプラスティックとは、大きさ5mm以下の微細なプラスティックのこと。
 マイクロプラスティックが生まれる過程は、以下のふたつです。

 

◇一次マイクロプラスティック

洗顔料や石鹸、シャンプーなどに含まれている微粒子状のスクラブ材や、工業用研磨剤などに由来するもの。

◇二次マイクロプラスティック

海に流れ出たプラスティック製品が、紫外線、オゾン、波などによって劣化、小さな破片となったもの。

マイクロプラスティックが人体に与える影響とは

 マイクロプラスティックはとても小さいものです。そのため、先に挙げたイワシなど、プランクトンを食べる魚が、マイクロプラスティックも食べてしまうわけです。マイクロプラスティックは、例えばイワシを食べる大型魚類の体内にも入ってきます。当然、人間もしかりです。

 よくある間違いが、「マイクロプラスティックそのものが人体に有害である」というもの。マイクロプラスティックを人間が食べてしまっても、基本的には便とともに排出されると考えられます。

 問題は、マイクロプラスティックの性質にあります。
 プラスティックは、そもそも石油から作られる固体状の油ともいうべきものであり、海中に漂うさまざまな有害物質(※残留性有機汚染化学物質/POPs)を、マイクロプラスティックが吸着してしまうと考えられています。
 つまり、マイクロプラスティックが、有害物質の運び屋になり、海洋中の有害物質を、人間の体内に持ち込んでくる危険性があるわけです。

 ただし...
 マイクロプラスティックが、人間の体内に有害物質を運んでくる、という事実は、現時点で確認されていません。確認されているわけではありませんが、「そんなことはありえない!」と証明することもできません。

 現時点では、「黒に近いグレー、だけど白であることはないであろう」という認識で、危険視されているのがマイクロプラスティックというわけです。

マイクロプラスティックは、新たなビジネスチャンスなのか?

 2018年1月、世界中に衝撃が走りました。
 中国が、廃棄プラスティックの輸入禁止を発表したのです。

 中国は、それまで先進各国から年間700万トン以上の廃プラを買い付け、リサイクル、再生資源に生まれ変わらせてきました。日本国内では、年間約900万トンにおよぶ廃プラの内、約98万トンを中国で処分していたとされます。
 中国ショックとも呼ばれる、廃プラの輸入禁止措置は、世界中で問題になりつつあります。
 国内においても、今までは売ることができた廃プラに処分費用がかかるようになったわけですから、影響がないわけがありません。

 

 一方、EUはこれをビジネスチャンスと捉えているふしもあります。
 2018年1月、EUの行政執行機関である欧州機関は、「欧州プラスティック戦略」を発表しました。

  1. 新たな投資・雇用の機会を創出し、
  2. 30年までにEU市場におけるすべてのプラスティック容器包装をリサイクル可能なものとし、
  3. 使い捨てプラスティック製品を削減し、
  4. 海洋汚染対策として、マイクルプラスティックの使用規制を検討する。

 EUのスタンスは現実的ですね。
 プラ製品は、「日常生活において、とても重要なものである」と前置きした上で、でも「環境や人々の健康に悪影響を及ぼす可能性がある」ため、「これまでの利用・活用方法を見直しましょう」というのが、EUのスタンスです。
 また、これまで海外に頼ってきたリサイクルビジネスを、EU圏内で地産地消化することで、2030年までに20万人分の新規雇用を生み出すとされています。
 加えて、自然に帰る生分解性プラスチックの開発も、これから加速させていこうという目論見もあるのでしょう。

 EUのスタンスは、マイクロプラスティックを新たなビジネス創出に利用しているとも言えます。

 

 反面、こと日本国内においては、マイクロプラスティックの危険性と、プラ製品を排除する流ればかりが強調されて、ビジネスチャンスとしての側面が議論の対象になっていない感があります。
 これが残念ながら、プラ製品をことさら悪者視する、今の脱プラ論調ではないでしょうか。

「紙製ストローだったら、その辺にポイ捨てしてもOK」なわけじゃない!!

※画像はクリックで拡大します。

 実は筆者、定期的に荒川のゴミ拾い活動に参加しています。
 岸辺の、ほんの数メートルの範囲に、驚くほど多くのゴミが隠れています。

 ゴミ拾いをしていて分かるのは、甘えが生み出すゴミの多さです。
 川のゴミと言うと、不法投棄されたものをイメージする方も多いかもしれません。しかし、そういったゴミはないわけではありませんが、意外と少数です。
 圧倒的に多いのは、ペットボトルです。それに、おにぎりやパン、弁当などの容器や包装が続きます。

 これらのゴミは、勝手に川にたどり着くわけではありません。誰かが持ってきて、誰かが消費して、そして誰かが川に置き去ったものです。
 風で飛ばされたものもあるでしょう。
 「これぐらい、まあいいだろう」とポイ捨てされたものもあるでしょう。

 例えば、街なかを歩いていて、タバコをポイ捨てする人がいます。
 この人たちは、捨てたタバコがどうなると思っているのでしょうか?

「たばこのフィルターや、たばこの葉そのものは分解されるから大丈夫でしょ?」

 道路上にポイ捨てされたタバコが少ないのは、定期的に清掃が行われるからです。
 そもそも微生物などが、生分解するのには時間がかかります。だいたい、アスファルトの上に、たばこを分解するような微生物は存在しないでしょう。

 マイクロプラスティックを始めとする、プラ製品の問題を論じる時に、既存のプラ製品をすべて排除し、生分解性プラスチック、もしくは微生物が分解可能な紙由来などの代替品に置き換えれば、すべてが解決されるかのような議論は、間違っています。

 これは、ストローを紙製などの生分解可能な素材に変えればOKと言うものではありません。

 まずは、ゴミはゴミ箱に捨てる、という当たり前のルールを徹底することです。
 特に日本においては、高度なごみ処理施設が存在するため、ごみを捨てるべき場所にきちんと捨てていれば、マイクロプラスティックがこれ以上生み出される可能性は少ないと言えます※。

 ゴミはゴミ箱に捨てる、という子どもでも分かる当たり前のルールを徹底せずに、ストローを紙製に変え、ペットボトルを紙パックに変更したところで、川岸や海に漂着するペットボトルが紙パックに変わるだけです。

 これでは、環境汚染の根本的解決にはならないと思うのは、私どもだけではないはずです。

 

※注記
一次マイクロプラスティックの原因となる製品、例えばプラスティック製のスクラブなどを含む洗顔剤や歯磨き粉は、日本ではまだ規制されていません。台湾などでは法規制され、また花王などは一次プラスティックの原因となる材料を代替材料に切り替えています。
つまり、マイクロプラスティックの発生原因となり、かつリサイクル工程で処理できない商品は、まだ国内に存在することは付記しておきます。

プラ製品を否定する前に考えるべきこと

 欧州環境庁によれば、海上ゴミのうち、直接海洋に投棄されたものは20%。
 残りの80%は、陸地で発生し、風や河川の流れにのって海にたどり着いたものだと言います。
 繰り返しになりますが、ゴミはゴミ箱に捨てるという当たり前のルールを徹底すれば、マイクロプラスティックを始めとする海洋ゴミは、大きく削減可能なのです。

 もうひとつ、ごみ処理、そしてリサイクルにかかるコストを、皆が共有し負担する覚悟も必要でしょう。先に述べたように、世界最大の資源リサイクル工場であった中国は、廃プラの輸入禁止を決めました。
 今までのような、安いコストで資源リサイクルを行うことが難しくなっていることを、皆が理解し、コスト負担を共有する必要があります。

 

 皆さん、プラスティック製品だけを悪者にしないでください。
 問題の本質を知り、本当に必要な対策とはどういったものであるのかを、本記事が考えるきっかけになれば幸いです。

参考および出典

週刊エコノミスト 2018/7/17
「象徴的なストロー流通禁止 EUの周到な経済戦略も背景」

東洋経済 2018/11/3
「加速する”脱”プラスティック」

日経ものづくり 2019/02
「脱プラは解決策になるか? 海洋マイクロプラスティック問題を読み解く」

マリンエンジニアリング 2017/09 Vo.52 No.5
「漂着ゴミに関する規制の動向」
「マイクロプラスティック、ミリプラスティック」

また記事中の画像は、筆者が「特定非営利活動法人 荒川クリーンエイド・フォーラム」の活動に参加した時に撮影したものです。



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