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GX(グリーントランスフォーメーション)が注目されるようになってから久しいです。
しかしながら、言葉としてのGXを耳にしたことはあっても、その意味するところや、現在の進捗については、「あまりよく分かっていないんだよね…」という方も多いのではないでしょうか?
本稿では、GXの意味や、日本におけるGXへの取り組みを、EUと比較しながら解説します。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、石炭や石油などの化石燃料に頼ってきた社会の仕組みを、二酸化炭素排出量の少ない太陽光や水素といった「クリーンエネルギー」中心へと根本から変える取り組みを指します。
日本がGXに注力する理由は、地球環境を守りつつ、エネルギーの安定確保と「新しい経済成長」を同時に実現するためです。政府は今後10年間で、官民合わせて150兆円を超える巨額の投資を行う計画を立てています。
私たちの身近なところでは、電気自動車(EV)の普及や断熱性の高い省エネ住宅への補助、ドローンなどを活用した効率的な配送といった形で、暮らしの利便性を高めながら脱炭素化を目指しています。
2023年度の温室効果ガス排出量が過去最低を記録するなど、着実な成果が出始めています。先行するEUが強力な規制で変化を促すのに対し、日本は技術開発への投資を重視し、世界をリードすることを目指しています。
GXは、未来の豊かな暮らしと強い経済を両立させるための、社会全体の大きなアップデートと考えるべきでしょう。
日本は2030年までに2013年度比46%削減(さらに50%の高みに向けて挑戦)するという目標を掲げています。
環境省の発表によれば、2023年度時点での削減率は27.1%となっています。二酸化炭素換算で約4億トンの削減(2013年度比※)が進んでいる計算です。
一方、EUは2030年までに1990年比で55%削減という目標を掲げています。2023年時点では約37%の削減を達成しており、数字だけを見ると日本より進んでいるように見えます。これはヨーロッパがもともと環境意識が高く、日本よりも早くから多角的な取り組みを開始していたためです。
製造業が経済の基盤である日本とは、産業構造そのものが異なるという点にも留意する必要があるでしょう。
※2013年度排出量が13億9500万トンに対し、2023年度が約10億1,700万トンですので、差し引き約3億7,810万トン
電力における再生可能エネルギーの割合を見ると、日本は全体の約22.9%(2023年度実績:経済産業省)です。対して、EUは44.7%(2023年実績:Eurostat)となっており、日本を大きく上回っています。
EUでは化石燃料(天然ガス・石油・石炭等)による発電比率が低下しており、再生可能エネルギーが主要な電力源となりつつあります。
国別にみると、デンマークやポルトガルのように再生可能エネルギー比率が8割を超える国もあり、これらが「環境先進国」と呼ばれる所以となっています。
ただし、再生可能エネルギーの発電には地理的条件が大きく影響します。例えばデンマークは平地が多く三方を海に囲まれており、安定した強い風が得られるため風力発電に適しています。
対して日本は山地が多く、送電網の整備や適地の確保という観点では、平坦な欧州諸国に比べて不利な条件にあると言わざるを得ません。
日本の電力システムには、欧州とは異なる特有の課題があります。
対してEUは、国境を越えた広域送電網(インターコネクター)が整備されており、国家の枠を超えて電力を調整・融通できるという構造的な強みがあります。
GXの違いをもっとも生み出すのは、政策の違いでしょう。
EUにおける環境対策は規制主導型と言われます。
カーボンプライシング(炭素価格)の仕組みがあり、二酸化炭素を排出するとお金がかかるようになっていますが、
対して日本では、官民150兆円の投資を呼び水とした投資の促進と産業競争力の強化を基本としています。GXへの基本姿勢は各事業者の自主性に任せており、義務化までは至っていません。
これは国というよりもその国に住む国民の意識によるものではないかと思われます。
先ほど出たデンマークは1973年のオイルショックを教訓に、そのころからエネルギー自給率を高めるために風力発電を積極的に推進してきました。長年のノウハウも培われ、風力発電先進国になっています。
デンマークは天然資源に恵まれた国ではありませんが、人的資源、再生可能エネルギー、農業資源、工業・海運の活用により、持続可能で競争力のある経済を維持しています。
日本も同じく資源の少ない国ですので、環境面で良いお手本になると思います。
| 日本 (GX推進法 / GX2040ビジョン) | EU (欧州グリーンディール) | |
| 主要目標 (2030) | 2013年比 ▲46%~50%挑戦 | 1990年比 ▲55%以上 |
| 政策手法 | 投資促進・インセンティブ優先 | 規制・法的義務先行 |
| カーボンプライシング | GX-ETS (2026年度より本格稼働) | EU ETS (2005年より導入・義務化) |
| 金融手法 | 世界初「GX経済移行債」の発行 | グリーンディール投資計画 (1兆€) |
| エネルギー方針 | 原子力・水素等を含むベストミックス | 再エネ重視 (2023年発電の44.7%が再エネ) |
原子力発電についても触れておきましょう。
GXにおいて原子力発電の扱いは大きな議論の的です。日本はエネルギー自給率向上と脱炭素を両立するため、原発の再稼働や運転期間の延長を掲げ、重要電源として再定義しています。
対するEUは、国によって対応が分かれます。フランスなどの推進派は「低炭素なクリーンエネルギー」と主張する一方、ドイツなどは安全面や廃棄物問題を懸念し、脱原発の立場を取ります。しかし、EU全体の投資指針である「EUタクソノミー」では、一定の条件付きで原子力への投資を「持続可能」と認定しました。
日本が得意なのは、省エネや効率化です。結果、エネルギーの使用量自体の削減が進んで来ており、数字にも表れています。
これからもうまく強みを生かした取り組みを行う事で、もっとGXも進んでいき、環境に配慮した取り組みも進んでいくものと考えています。
(執筆 品質・データ管理部 岡谷)