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クイズです。
以下に挙げた内容は、企業同士の営業活動においてありがちな行為です。
この中で、2026年から新しくなる取適法(旧:下請法)に違反する可能性があるのはどれでしょうか?
実はこれら、すべて法律に抵触する可能性があります。その理由は記事の最後に解説しましょう。
今回は、分かっているようで分かっていない、この大切な法律について和泉通信流に解説しましょう。
ビジネスの世界では、仕事を発注する側(注文する側)と受注する側(仕事を受ける側)がいます。特に、大きな会社が中小企業に仕事を発注する場合、どうしても発注する側の立場が強くなりがちです。
このような力関係の差から、受注する側が不利な条件を押し付けられることのないように、公正な取引のルールを定めたのが下請法です。
そして、この下請法は「中小受託取引適正化法」(通称:取適法)と名称を変えて、2026年1月1日に施行されます。
これほど大規模な改正は約20年ぶりのことです。
「中小受託取引適正化法」という新しい名前には、発注者と受注者が「下請け」という上下関係ではなく、対等なパートナーであるべきだという大切なメッセージが込められています。
この法律の大きな目的は、「取引の公正化」と「受注する中小企業の利益を守ること」です。
例えば、代金の支払いを不当に遅らせたり、一方的に金額を値切ったりするような行為を防ぎ、中小企業が安心して技術や品質の向上に力を注げる環境を作ることが、日本経済全体の成長につながるという考えに基づいています。
独占禁止法には、「優越的地位の濫用」という概念があります。
独占禁止法では、取引で有利な立場にある事業者(優越的地位にある側)が、その立場を利用して相手に不当な不利益を与える「優越的地位の濫用」を禁止しています。
「優越的地位」とは、単に会社の規模が大きいだけでなく、取引相手がその事業者との取引に著しく依存しているなど、取引条件の設定に大きな影響力を持つ立場を指します。この立場を利用して、協賛金を不当に要求したり、自社製品の購入を強制したりすることが「濫用」にあたります。
取適法は、まさにこの「優越的地位の濫用」が起こりやすい特定の取引類型と事業者規模を抽出し、禁止行為を具体的に定めた特別法と位置づけられます。つまり、取適法の対象となれば、「優越的地位にあるかどうか」を個別に判断するまでもなく、定められた禁止行為は直ちに違反となります。
裏を返せば、取適法対象外の取引であっても、不公正な取引は独占禁止法の「優越的地位の濫用」として問題になる可能性が常にあります。そのため、すべての企業にとって公正な取引を心がけることが重要です。
取適法が適用されるかどうかは、「取引の内容」と「お互いの会社の規模」というふたつの条件で決まります。どちらの条件にも当てはまる場合、自ずと取適法のルールを守る必要があります。
取適法の対象となるのは、主に以下の4種類の仕事のやり取りです。
上記の取引に加えて、発注側(委託事業者)と受注側(中小受託事業者)の会社の規模が以下の基準に当てはまる場合に、この法律が適用されます。2026年の改正で、従来の「資本金」基準に加えて「従業員数」の基準が追加され、対象範囲が大きく広がりました。
取引の種類 | 発注側(委託事業者)の規模 | 受注側(中小受託事業者、個人事業主を含む)の規模 |
①製造委託・修理委託 ②プログラム作成 ③運送・倉庫保管・情報処理サービス |
資本金3億円超 または従業員300人超 |
資本金3億円以下 または従業員300人以下 |
資本金1千万円超 ~3億円以下 |
資本金1千万円以下 | |
④上記以外の情報成果物作成 (デザイン、コンテンツ制作など) ⑤上記以外のサービス提供 (ビルメンテナンスなど) |
資本金5千万円超 または従業員100人超 |
資本金5千万円以下 または従業員100人以下 |
資本金1千万円超 ~5千万円以下 |
資本金1千万円以下 |
取適法では、発注側(委託事業者)に、取引を公正に進めるための4つの基本的な義務と、13の禁止行為が課せられます。
発注側(委託事業者)が、その強い立場を利用して受注側(中小受託事業者)に不利益を与えることを防ぐため、以下の13の行為が具体的に禁止されています。
たとえ受注側が同意していても、それが実質的に強制されたものであれば違反となります。
まだ改正取適法が施行前にも関わらず、最近、「優越的地位の濫用」に対する摘発が報道される機会が増えた気がしませんか?
分かりやすく言えば、政府側(中小企業庁と公正取引委員会が中心)は、本気になっているのでしょう。その背景には、日本がかつての経済大国としての存在感を失いつつあるという焦りがあるのかもしれません。
例えば、世界に大きな影響力を与えるとされる企業「GAFAM(ガーファム)」(※Google(Alphabet社)、Amazon、Meta(旧Facebook)、Apple、Microsoft)には日本企業はなく、すべてアメリカ企業です。
日本がかつての輝きを取り戻すためには、「優越的地位の濫用」のようなつまらないこと(と、あえて申し上げましょう)でビジネスを滞らせている場合ではない──取適法は、こういった事情もあり、注目されているのです。
摘発されて、「今までは大丈夫だったのに...」と後から後悔しないよう、ぜひ取適法(旧下請法)に対する認識と理解をアップデートしておきたいものです。
既にご案内した内容と重複する部分もありますが、冒頭に挙げたクイズに対する解説を付記します。