「間違えると大変!」、食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度とは

 最近、「ポジティブリスト(PL)」や「確認証明書」といった言葉を耳にする機会が増えています。
 今回は、食品包装にまつわるこれらのキーワードについて分かりやすく解説するとともに、気泡緩衝材エアセルマットにおける対応状況についてもお知らせいたします。

ポジティブリスト制度導入の背景

 2020年6月の食品衛生法改正により、食品用の器具や容器包装には、安全性が評価された物質のみ使用を認めるポジティブリスト制度が導入されました。5年間の移行期間を経て、2025年6月1日から完全に施行されます。

 これまでは使用を禁止する物質を定めたネガティブリスト制度でしたが、原則としてすべての物質の使用を禁止し、安全性が評価された物質のみ使用を許可するポジティブリスト制度へと転換されました。これにより、より高いレベルでの安全確保が図られます。

 この制度改正に伴い、食品を製造・販売される事業者様から、使用中の容器包装が新規制に適合しているか、包装容器メーカーや、弊社のような梱包資材メーカーなどへの問い合わせが増加しています。

ポジティブリスト制度の適用範囲

 本制度が適用されるのは、食品に直接接触する部分に使用される「合成樹脂」です。

  • 対象となる例
    • 食品を直接包むプラスチックフィルム
    • 多層フィルムの場合、食品に接触する最内層
    • 青果用のネットやトレー

  • 対象外となる例
    • 多層フィルムの中間層や外層(※溶出リスクがない場合に限る)
    • 個包装された食品を保護する緩衝材
    • 輸送用の段ボール箱

つまり、食品に直接触れない資材は、原則として本制度の対象外となります。

 

 印刷インキや接着剤の扱いも補足しておきましょう。
 外面への印刷インキや、フィルム層間を貼り合わせる接着剤は、本制度の直接の対象にはなりません。ただし、それらの物質が包装材を通して食品へ移行(マイグレーション)しないことが前提となります。

当社製品(気泡緩衝材エアセルマット)における対応

 当社の気泡緩衝材エアセルマットは、通常、食品に直接触れることを想定した製品ではありません。また、食品包装材に求められる衛生環境で製造しているわけではないため、もし食品に触れる形でご使用になる場合は、お客様ご自身の責任で衛生管理を行っていただくようお願いしております。

 一方で、安心してご使用いただくために、エアセルマットの原材料には、ポジティブリストに収載されている安全な物質のみを使用しています。

関連する証明書について

確認証明書

 化学研究評価機構(JCII)が発行する、製品がポジティブリスト収載物質のみで製造されていることを示す証明書です。制度の対象外である緩衝材などについても、サプライチェーン全体での安全性確保のため、お客様から提示を求められるケースが増えています。

適合証明書(厚生省告示第370号)

 食品包装容器に求められる溶出試験(ホルムアルデヒド、重金属など)の基準を満たしていることを証明する書類です。これはあくまで溶出試験の結果であり、前述の「確認証明書」の代わりにはなりません。

【参考】青果物の扱いについて

 泥付きの野菜や果物も「食品」に該当するため、これらに直接触れる緩衝材(ネットやトレー類)は食品容器とみなされ、ポジティブリストの対象となります。

 ちなみに、青果物に消費・賞味期限が表示されないのは、個体差が大きく、保管条件によって品質の劣化速度が異なるためです。ただし、カットフルーツのように人の手が加えられたものは「加工食品」となり、期限表示が必要になります。

 今回の制度改正は、従来のネガティブリスト制度では安全性が未評価の新規化学物質に対応できないという課題を解決し、日本の食の安全性をさらに高いレベルへ引き上げるものです。

 この動きは国際基準との整合性を図る目的もありますが、日本の制度がそのまま海外で通用するわけではありません。国によっては日本よりさらに厳しい基準を設けている場合もあるため、製品を輸出される際は、必ず輸出先の規制をご確認ください。

 今後、プラスチック資源循環促進法(プラ新法)の施行に伴い、再生プラスチックの利用が推奨される中で、食品容器包装に関する基準がどのように変化していくか、引き続き注視が必要です。



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